経審点数を効率よく上げるための年間経営計画の立て方
経営事項審査(経審)で加点する年間計画戦略を解説。X1~W点の構成、決算月との関係、技術職員採用スケジュールなど、中小建設業者が実践できる具体的な改善方法をご紹介します。
経審点数向上は戦略的な年間計画で実現できる
経営事項審査(経審)は、建設業許可を持つ企業の経営状況・技術力・社会性などを総合的に評価する制度です。この審査結果の総合評定値(P点)は、公共工事入札で重要な指標となります。多くの中小・中堅建設業者にとって、経審点数の向上は経営上の優先課題ですが、効果的な対策を講じるには、単発の取り組みではなく、年間を通じた計画的なアプローチが不可欠です。
経審の主要評価項目(X1~W点)の構成を理解する
経審点数の構成要素
経審の総合評定値(P点)は、以下のような主要項目から構成されています。
| 項目 | 概要 | 主な改善方法 |
|---|---|---|
| X1点 | 完工高(過去5年の実績売上) | 件数・規模の実績を重ねる |
| X2点 | 経営状況(財務指標) | 利益率改善、債務削減 |
| Y点 | 技術力(資格者・実績) | 一級資格取得、技術者配置 |
| Z点 | 社会性(労務管理・安全) | 福利厚生整備、災害件数削減 |
| W点 | 地域性(地元貢献など) | 地域工事受注、社会貢献活動 |
これらの項目は独立していますが、年間計画で相互に補完できます。
X1~W点それぞれの加点戦略
X1点(完工高)の戦略
X1点は過去5年間の累計完工高が基準となるため、短期的な改善は難しい項目です。しかし、以下の観点で年間計画を立てることが重要です。
- 中期経営計画の策定:向こう3~5年で受注額・件数の目標を明確化する
- 大型案件の受注戦略:単価の高い工事を確保することで、同じ年数でも累計額を増やす
- 既存顧客との関係強化:定期的な工事受注を見込める関係を構築する
決算月が1月の業者であれば、前年の秋から冬にかけて大型案件の営業活動をスケジュールすることで、翌々年の経審に反映させることができます。
X2点(経営状況)の戦略
X2点は、利益率・借入金依存度・自己資本比率などから算出される最も改善しやすい項目です。
決算月の有効活用
- 経審の決算書は、申請直前の過去1期分の決算書を使用します
- 決算月を設定する際は、利益が最大化する月を選ぶことが戦略的です
- 例:決算月が3月の場合、前年4月~当年3月の1年分の実績で評価されます
年間を通じた財務改善活動
- 下半期の利益見込みに基づき、上期中に改善施策を講じる
- 原価低減活動(材料費削減、労務費の効率化)を通年で実施
- 不採算工事を減らす営業戦略の徹底
Y点(技術力)の戦略
技術力は、配置技術者(一級建築施工管理技士など)の数・等級が直結する項目です。
技術職員採用計画
技術職員確保は最低6~12ヶ月の準備期間が必要です。効果的なスケジュール例を示します。
- 1月~3月:採用ニーズの経営幹部会議で確認、資格要件の決定
- 4月~6月:新卒採用説明会、転職者への採用面接開始
- 7月~8月:内定者研修、配置準備
- 9月~:実際の配置開始、資格取得支援プログラム開始
資格取得支援
- 入社後3~5年で一級資格取得を目指す研修体制
- 当該年度中に資格合格者を見込める場合、経審前年の秋から冬に集中講座を実施
- 試験合格後、経審申請直前に資格証をP点加算対象に組み込む
Z点(社会性)の戦略
Z点は、労働保険加入、雇用条件整備、安全成績などで評価されます。
- 通年で無災害を目指す安全文化:ヒヤリハット報告、安全教育の定期実施
- 福利厚生制度の整備:年度初め(4月)に新制度導入を行い、通年で実績を積む
- 人材育成制度の文書化:年初に就業規則・教育訓練計画を策定・公開
W点(地域性)の戦略
W点は、本社所在地での工事受注実績が評価されます。
- 地域別営業戦略:年度初めに地域別営業目標を設定
- 地元自治体との関係構築:年初に地方自治体の工事発注予定を把握
- 社会貢献活動の計画化:地域清掃、地元イベント協力など、年間スケジュールに組み込む
決算月との関係性を最大限活用する
決算月の選択の重要性
建設業では、決算月を自由に設定できるという利点があります。
- 利益が最大化する月を決算月に設定:業界の季節変動を踏まえ、通常最も利益率が高い月を選択
- 例:冬場に大型物件の竣工が集中する業者なら、3月決算が有利
- 例:春~夏の公共工事が中心なら、9月決算で上期の利益を確定させる
経審スケジュールへの組み込み
経審申請は、通常5月~6月の期間に集中します。決算月から申請月までの間隔を考慮した計画が重要です。
| 決算月 | 経審申請目安月 | 対応期間 |
|---|---|---|
| 1月 | 5月~6月 | 4ヶ月の準備期間 |
| 3月 | 7月~8月 | 4ヶ月の準備期間 |
| 9月 | 12月~1月 | 3ヶ月の準備期間 |
4ヶ月の準備期間を活用して、決算書の作成・承認、技術職員配置の確認、資格取得状況の整理などを計画的に進めることで、加点機会を逃さないようにできます。
実践的な年間経営計画の骨組み
4月(新年度開始)
- 経営幹部で中期・年間目標の確認
- 技術職員採用ニーズの協議
- 営業目標の地域別・工種別設定
7月~8月
- 技術職員内定者の研修・配置準備
- 資格取得試験の受験者確認
10月~11月
- 下期利益見込みの精査
- 決算月までの損益改善策の実行
1月~3月(決算月前後)
- 決算書の作成・税務申告
- 経審用の各種書類準備
- 新年度の技術職員配置確認
5月~6月(経審申請時期)
- 経審申請
- 評定値公告後の営業活動への活用
よくある失敗と対策
失敗例1:年度途中で人員計画を変更
技術職員は配置実績が評価に反映されるため、途中採用・離職は加点を落とします。年初に採用計画を固め、離職防止策を講じることが重要です。
失敗例2:決算月の変更
決算月を変更すると、複数年度の経審で評価期間がズレてP点が低下することがあります。5年程度は同じ決算月を維持する方針が望ましいです。
失敗例3:資格取得が経審申請に間に合わない
試験合格証の発行は通常試験から2~3ヶ月後です。経審申請時点での有効な資格のみ加算されるため、逆算スケジュールが必須です。
まとめ
経審点数の向上は、単発の施策ではなく、年間を通じた戦略的な経営計画に組み込むことで初めて実現します。X1点の実績積み重ね、X2点の財務改善、Y点の技術者配置、Z点の安全・労務管理、W点の地域性——これらは、すべて年度当初からのロードマップに基づいて動きます。
特に決算月の活用と技術職員採用スケジュールは、6~12ヶ月前からの準備が加点機会を左右します。貴社の業界特性・経営状況に応じて、この記事で示した戦略を参考に、カスタマイズされた経営計画を策定することをお勧めします。
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