「その他」業種の入札評価点を逆算する|落札率と技術点から必要スコアを算出
「その他」業種の一般競争入札では発注者ごとに価格点・技術点の配点が異なります。過去案件から評価基準を逆算し、自社の技術点想定値をもとに最適な価格提示額を導き出す実務的手法を解説します。
「その他」業種の入札評価で逆算法が必須である理由
「その他」業種(土地造成・測量・鑑定・設計業務など多岐にわたる業種分類)の一般競争入札では、発注者ごとに価格点と技術点の配点比率が大きく異なります。同じ金額を提示しても、技術点配点が高い場合と低い場合では総合評価点が数十点変わることもあります。
従来の「競争入札だから安いほど有利」という単純な発想では、不要な値下げをして利益率を損なったり、逆に低い技術点を見落としたりするリスクがあります。過去の落札案件から評価基準を逆算し、自社の想定技術点をもとに「最適な提示価格」を科学的に導き出す手法が、中小〜中堅事業者の入札成功率を高めます。
逆算法の基本ステップ
ステップ1:過去落札案件から「評価点計算式」を推測する
入札公告や落札者調書から以下の情報を収集します:
- 落札価格(提示金額)
- 予定価格
- 落札率(落札価格÷予定価格×100)
- 技術点配点(公告に記載)
- 価格点配点(公告に記載)
- 総合評価点(可能な場合)
多くの発注機関は、総合評価点を以下の式で算出しています:
総合評価点 = 技術点 × 技術点配点率 + 価格点 × 価格点配点率
このうち価格点は、一般的に以下の計算式で導かれます:
価格点 = (予定価格 ÷ 提示価格) × 100
(または逆算式:予定価格が最も安い提示価格で満点という設定もあります)
ステップ2:落札案件の「価格点」を逆算する
具体例で説明します。
●想定ケース:測量設計業務
- 予定価格:1,000万円
- 過去の落札価格:850万円(落札率85%)
- 技術点配点:50点
- 価格点配点:50点
- 落札者の総合評価点:89点(公開情報から)
この場合、落札者の技術点を逆算すると:
価格点 = (1,000万円 ÷ 850万円) × 100 = 117.6点
総合評価点 = 技術点 × 0.5 + 価格点 × 0.5 = 89点
技術点 × 0.5 + 117.6 × 0.5 = 89
技術点 × 0.5 = 89 - 58.8 = 30.2点
つまり落札者は技術点30点程度での勝利です。
ステップ3:自社の「想定技術点」を客観的に見積もる
過去の落札案件群から複数の事例を集め、落札者の技術点の幅を把握します。
- A案件の落札者技術点:28点
- B案件の落札者技術点:35点
- C案件の落札者技術点:32点
このデータから、平均的な落札業者の技術点は30〜35点程度と推定できます。
自社の技術点評価を客観的に判定するため、以下の項目を確認します:
| 評価項目 | 自社の状況 | 想定点数 |
|---|---|---|
| 実績評価 | 同規模案件3件以上 | +3点 |
| 技術者資格 | 技士等有資格者配置 | +2点 |
| 地域性 | 対象地域内に営所有 | +2点 |
| 品質管理体制 | ISO9001取得 | +1点 |
| 合計 | 8点/配点50点中 |
このような自己評価から、自社の「最低保証技術点」を見積もります。
ステップ4:最適な提示価格を逆算する
自社の想定技術点が32点である場合、どの価格で提示すれば落札可能か逆算します。
仮定条件:
- 予定価格1,000万円
- 技術点配点50点、価格点配点50点
- 想定技術点32点
- 予想される競争他社の技術点:28〜35点(平均31点)
目標総合評価点を80点と設定した場合:
総合評価点 = 32 × 0.5 + 価格点 × 0.5 = 80
16 + 価格点 × 0.5 = 80
価格点 = 128点
提示価格 = 予定価格 ÷ (価格点 ÷ 100)
提示価格 = 1,000万円 ÷ 1.28 = 約781万円
つまり、781万円で提示すれば、総合評価点80点が見込めるという計算です。
実践での注意点
配点比率の変動に備える
すべての発注機関が技術点50%・価格点50%ではありません。以下のパターンがあります:
- 技術点70%・価格点30%:技術力重視の複雑業務
- 技術点30%・価格点70%:定型業務で価格競争激化
- 技術点配点なし(低入札価格調査のみ):シンプルな工事
そのため、同じ発注機関の過去案件を3件以上集めて「その機関の傾向」を把握することが重要です。
技術点の甘辛を考慮する
同じ評価項目でも、審査委員ごと、または年度ごとに採点の甘辛が変わります。複数年度のデータを比較し、「この発注機関は平均的に厳しめ」「ここは甘め」という傾向を記録しておくと、より精度の高い逆算ができます。
最低制限価格を確認する
計算結果の価格が低すぎる場合、最低制限価格(LCP)に引っかかる可能性があります。公告時に最低制限価格が記載されていれば、それより下には提示できません。その場合は技術点で勝つしかないため、技術提案資料の充実度を上げる戦略に転換します。
実務ツール化のコツ
Excelテンプレートの活用
過去の落札案件情報を蓄積し、以下の計算式をテンプレート化すれば、新しい公告が出た際に数分で最適価格が算出できます:
- 同一発注機関の過去案件データ行
- 逆算された各案件の落札者技術点
- 自社の想定技術点との比較
- 目標点数に必要な提示価格
部門ごとのデータベース構築
「その他」業種でも測量・設計・造成など部門によって評価基準が異なります。部門別にデータベースを整理することで、次年度以降の精度がさらに高まります。
まとめ
「その他」業種の入札では、発注者ごとの価格点・技術点配点の差異を活用することが勝率向上の鍵です。過去の落札案件から評価基準を逆算し、自社の客観的な技術点を見積もることで、不要な値下げを避けながら落札可能性を最大化する提示価格を導き出せます。
この手法は一度テンプレートを作れば継続的に活用でき、営業判断の根拠となるデータも蓄積されます。特に中小事業者が限られた営業リソースを効果的に配分する際に、大きな武器となるでしょう。
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